良く知られたリチウムイオン電池に比べて、高性能となる可能性を持っている全固体電池。
日本においては、その研究が意欲的にされているのです。
「けれど、全固体電池なんか良く知らない」と言われる人も多いのではないでしょうか?
そういう人のために、どうして、全固体電池が注目されているのか紹介したいと思います。
目次
リチウムイオン電池の特徴
現時点で、主として使われているリチウムイオン電池というのは、研究に尽力した吉野彰氏がノーベル賞を受賞するくらい物凄い発明になります。
その1番のメリットとしては、エネルギーの密度が、今までのものよりも高いことだと言えます。
電池を小型化する事が出来て、スマホの立ち上げが実現したのはそのおかげになります。
また、今までのものに比べますと、劣化を抑えた事もメリットとされて挙げることが出来るでしょう。
一方でデメリットについては、高温で発火するリスクがあるなど安全性の面にあるのです。
全固体電池とは
現時点での電池というのは、液体をイオンが動くことにより、エネルギーが生じる仕組みとなります。
このタイミングで「え、乾電池は乾いているので乾電池なんでしょ?」と考えた人もいそうですね。
古びた乾電池が液漏れしてたといった経験がある人もいるのではないでしょうか?
そういった事情からも分かるように、乾電池においても、液体は使われているのです。
そして、このイオンを動かす液体を電解質といいます。
この電解質が固体のものが全固体電池になります。
ちなみにそのほぼすべては、リチウムイオン電池の一種なのです。
全固体電池のメリット①『安全性・耐久性』
それでは、全固体電池のメリットとしまして、なにより挙げられるのが耐久性の高さになります。
ですので、長い期間に及ぶ使用あるいは、過酷な環境下においても、使用にも耐久性があると期待されているのです。
それから最大のメリットとされることが、安全性の高さになります。
全固体電池の電解質とされるもの酸化というのは、燃えづらい事が特徴になります。
また液体を使用しない全固体電池には言うまでもなく、液漏れのリスクもあり得ません。
こういう事から、今までの電池とは違って、安全性が高いと考えられるのです。
全固体電池のメリット②『形状の自由度が高い』
安全性が高いことは、電池のこれまで以上の小型化に直結します。
現時点での、リチウムイオン電池に絶対必要な冷却装置や電池の周りの空間が、全固体電池においては必要としません。
その分だけ、大きさを小さくする事が出来るのです。
さらに、全固体電池については、熱に強く、正極や負極の材料であったり大きさを変える事も出来るので、これもまた電池の小型化に役立ちのです。
この他には、安全性に注力しなくても良いという事は、形状に対しての制約もほとんどなくなるのです。
薄くする、何層にも重ねた構造にする、折りまげる等、使うものに応じて、いろいろな形にする事が可能となります。
そういった理由から今現在のリチウム電池と比べて、より一層、高性能な電池を作る事もあり得るのです。
全固体電池のメリット③『エネルギー密度を高くできる』
全固体電池は、今現在のリチウムイオン電池と比べて、高いエネルギー密度を実現可能だと期待されていると思われます。
電解液の時には安全性の問題によって使う事ができなかったのですが、電圧の出力等の高い素材を正極や負極に使うことが出来るようになるのです。
しかも、安全性が高くなることで、構成の簡易化が出来るはずです。
このことから、現時点でのリチウムイオン電池と一緒の大きさで、一段とエネルギー量の高い電池を作れるのです。
そしてつい先ほど、電池の形状を自由に出来ると言ったのですが、これに関しても、エネルギー密度を高くする事に、役立ちます。
電極と電解質を極力薄くし、それを何層にも重ねることによって、効率を高める事が出来ることが想定できるのだそうです。
また、全固体電池というのは、イオン伝導率が従来においての、リチウムイオン電池とは異なり劣るとされる問題を、当初はずいぶん解消する事ができずにいたのです。
ですが2016年、トヨタと東京工業大学の共同研究によって、電解液の3倍以上の出力を有する電解質の開発に成功したというわけです。
全固体電池に問題はないのか?
全固体電池の研究に関しては、さほど乗り気じゃない国や企業も伴うそうです。
具体的に言うと、世界で最も大きい、中国の電池会社CATLについては、2030年までは、全固体電池の実用化は行わないことを決めたとの事です。
このことは果たしてどうしてなのでしょうか?
全固体電池においては、大きな可能性があるとは言っても、現時点での、リチウム電池以上のメリットを現状では見出す事ができないというのが大きな理由なのです。
とりわけ、電気自動車に使うような大容量の電池は量産化に至るまで、こぎつけるというのは難しく、「それほどまで全固体電池にとらわれる必要があるのかどうか?」と訝しがる専門家が大部分だと言えます。
全固体電池に将来性はあるのか?
では、全固体電池に将来はあるのでしょうか?
日本の専門技術者の多くは、現時点でのリチウムイオン電池の状態では不完全だと考えていて、それに代わるものとし、全固体電池の研究に注力しています。
特に電気自動車を浸透させたいトヨタ自動車については、電気自動車の性能の向上だけではなく、コスト削減には、全固体電池が大きな鍵を握っていると考えています。
なお、セラミック系の電解質を使っている、小型電池は量産化実現の見通しが立ったらしく、もうすでにサンプルを出荷されている会社もあるのです。
また村田製作所においては、リチウムイオン電池より優れる全固体電池の開発に成功したようです。
将来的に、全固体電池が世界中を圧巻する日もくるのかもしれません。
現時点での、リチウムイオン電池というのは、高性能ではありますが、デメリットも存在します。
全固体電池は、そういったデメリットをなくした上で、性能も固められる可能性を持っているのです。
グローバル規模で電池の開発競争は勢いを増しているものの、全固体電池の研究においては、あんまり力を入れていないみたいですね。
日本が主体となるチャンスかもしれないですね。
今までも、日本は電池業界でいくつもの偉大な発明をしてきています。
全固体電池の開発においても、成功し、また電池界の歴史を塗り替えることが可能なのでしょうか?
動向を注視したいですね。