日本については、実のところ、いろいろな分野で世界を牽引しているのです。
その一つに「半導体」の技術が挙げられます。
半導体というのは、スマホもしくはパソコンなどを作るために、絶対に必要なものとなります。
そして最近、新たなる半導体の技術を日本が開発したとのことです。
それは、果たしてどんなものなんでしょうか?
目次
半導体というのは?
基本的に半導体というのは、どういうものなんでしょうか?
物質においては、電気を通すものと、通さないものがあるとされるのは、みなさんも知っておられますよね?
例を挙げると、プラスチックあるいはゴムというのは電気を通しませんし、アルミニウムだったり銅というのは電気を通しますよね。
こんなふうに、電気を通す物質を「導体」、電気を通さない物質を「絶縁体」と言います。
導体と絶縁体の異なる点は、抵抗率の違いなのです。
導体というのは、抵抗率が低くて、絶縁体は抵抗率が高いことになります。
それでは、半導体については、どうなのでしょうか?
半導体というのは、温度が異なれば抵抗率が変わります。
温度が低い時は、電気を通してづらくなり、温度が高くなるにしたがって、電気を通しやすくなるのです。
この性質については、電気製品のコントロールに、必要不可欠のものになります。
私たちがよく使う電気製品でいえば、パソコンあるいはスマホ等の他にエアコンの温度センサーや、炊飯器の火力調節、洗濯機、LED電球等、全てのデジタル家電に使われているのです。
ではこの半導体に使われる物質には、どういうものがあるのでしょうか?
半導体に使われる物質
半導体においては、単一の元素で構成されている「元素半導体」と複数の元素で構成されている「化合物半導体」の2種類があります。
元素半導体においては、皆さんも、よく知っている「シリコン」があります。
シリコンというのは、「ケイ素」という元素で、地球上の色々なものに含んでいます。
地球上のほぼすべてのシリコンに関しては、他の元素と結び付いていることから、半導体とし、使うにはシリコンのみ抽出することが必要です。
この抽出においては、高い技術が不可欠ですし、かなりの電力を要するそうです。
一方で、化合物半導体というのは、色々な元素の組み合わせにより、作られ、組み合わせによって、異なる性質を持ちます。
化合物半導体というのは、シリコンと比較すると、結晶が壊れやすいこと、費用が掛かるという事から、従来は一般家電にはあんまり使われていなかったのですが、シリコンよりも、電子の移動速度が速い等、技術力のある性能が評判になり、近頃では開発が進んでいます。
特に注目されているものが、「炭素ケイ素」と「窒化ガリウム」になります。
具体的に言うと、列車に使用される半導体をシリコンから炭化ケイ素に変えたところ、最大40%もの省エネが実現したのだそうです!
これは、物凄いことではないでしょうか。
そのように半導体というのは、電化製品に必要不可欠のものであって、半導体の性質が電化製品の機能性においても、大きな影響を与えるかもしれません。
そんな訳で、現在でも各国で一層、高性能な半導体の開発が行われているのです。
酸化ガリウム半導体とは?
そうした中、世界を変えてしまう、物凄い半導体の開発に、日本が成功を収めたとされるニュースが世界を賑わたのです。
日本が実用化した、半導体酸化ガリウムというのは、現在に至るまで、沢山の人が開発に注力してきた炭化ケイ素あるいは、窒化ガリウムの実績を瞬時に無効にしてしまうレベルの性能を持つのだそうです。
このような、酸化ガリウムというのは、本来はLED基盤や深紫外線受光素子での用途を考慮して開発されていたものだったのです。
電化製品に使う、パワー半導体での、研究がスタートしたのは、2010年頃になります。
この研究については、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の東脇正高氏、京都大学の藤田静雄教授、タムラ製作所の倉又郎人氏の3名において、始まったのだそうです。
酸化ガリウム半導体というのは、本来は、日本からスタートした研究だったのですね。
いずれにしても、約10年くらいで、このような成果を上げてしまうなんて驚かされますよね。
酸化ガリウム半導体のメリット①:『高性能・省エネ』
それでは、酸化ガリウム半導体というのは、どれだけ、ものすごいのでしょうか?
理解しやすく、数値で示してみることにします。
シリコンに対して、半導体の性能がどれほど優秀なのかを、示す数値にバリガ性能指数というのがあるのです。
この数値を使って表せば、シリコンの1に対し、炭化ケイ素は340、窒化ガリウムについては870となります。
これのみでも、どれほど炭化ケイ素や窒化ガリウムの性能が優秀であるかが理解できますよね。
それでは、話題になっている酸化ガリウムについては、どうなのでしょうか?
驚くことに、3444とされる驚異的な数値になってしまうのです!
見事な絶対的高性能を誇っている事が明らかですよね。
このバリガ性能指数の値というのは、大きいほど電力損失が小さくなることを指し示します。
..と言うことは、他に類を見ない省エネが望めるということなのです。
酸化ガリウム半導体のメリット②:『サイズを小さくできる』
半導体の性能が高いというのは、他の半導体と同一の大きさでも、一段と大きな性能を期待できることを示します。
要するに、半導体のサイズを一層、小さくすることを可能にするのです。
現在では、半導体市場については、スマホあるいはパソコンなどへの使用において、一段と小型化したものを開発しようと競争に拍車がかかっています。
そうした中、酸化ガリウム半導体が実用化されると、一瞬のうちに、小型化が進むことになります。
酸化ガリウム半導体のメリット③:『最大のメリットコスト』
「けれども、これほど高性能ならば、コストも高額なのでは?」と考えられた方も多いのでは?
ですが、酸化ガリウムが物凄いというのは、ここまでの高性能を誇りつつ、コストをシリコンと同等に、抑制できることができる点にあります。
炭化ケイ素あるいは窒化ガリウムについては、高性能ではあるけれど、コストが掛かることが欠点で、そういうわけで、依然として一般家電に行き渡るまでには至っていないのです。
その点では、酸化ガリウムについては、コストを抑制して、製造する方法が見つかっているのです。
その一つが京都大学発のベンチャー企業フロスフィアが開発した「ミストドライ法」になります。
前文で、シリコンを抽出するためには、沢山の電力と高い技術が必要不可欠だと言いました。
ですが、このミストドライ法というのは、ある特殊な液体に酸化ガリウムを溶かし、サファイア基板に吹き付けて、再度、結晶化するだけなことから、容易に出来るのだそうです。
これだけではなく、格段に高品質な結晶を作ることができる方法が開発されていて、NICTとタムラ製作所が中心のベンチャー企業ノベルクリスタルテクノロジーにおいては、シリコンと比べて、格段とコストダウンとなる製造方法を開発していることから、将来的にシリコンの価格の3分の1くらい以内に、できると語っておられます。
日本が世界をリードしている?!
一番最初に、紹介させて頂きました、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の東脇正高氏、京都大学の藤田静雄教授、タムラ製作所の研究チームについては、あれ以降、NICTとタムラ製作所がメインの「ノベルクリスタルテクノロジー」と、京都大学がメインの「フロスフィア」の2つのベンチャー企業を誕生させ、酸化ガリウム半導体の開発を牽引してきたのです。
現在では、全世界がこの酸化ガリウム半導体に目を向け、開発競争はヒートアップしています。
ですが、日本が酸化ガリウム半導体の研究を牽引しているという事実には違いはありません。
そのうえで、ようやく、ノベルクルスタルテクノロジーが2021年、酸化ガリウム半導体の量産体制に取り掛かると発表したのです。
さらに、現在での主力のシリコン製のものと比べて、低価格になる見込みだそうです。
因みに、フロスフィアもミストドライ法での、製品化が実現しているとのことです。
現時点で、量産体制を急いでやっていて、2020年においては、量産をスタートさせたいとしているのです。
..ですが、この状況を諸外国が静観してみているはずなどありません。
現在では、アメリカでも酸化ガリウムの開発が促進されていて、ノーストップ・グラマン子会社のシノプティクスにおいては、単結晶酸化ガリウム基板の販売をスタートさせています。
世界で酸化ガリウム半導体の研究は増加していて、その研究論文の数も、うなぎ登りだということです。
世界に注目されている酸化ガリウム。
その研究を日本が牽引しているというのは、胸を張れますよね。
とは言っても、酸化ガリウム半導体の技術というのは、依然、誕生したばかりで、今のところ発展途上です。
うかすかしていると、外国に技術を追い抜かれることもあり得るのだそうです。
それを回避するためにも、日本の企業が協力してこれからも開発を進めていって欲しいですね。