現在、私たちは少子高齢化社会を生活しているのです。
それから先の事を気にするしないとは関係なしに、時間というのは絶対に流れ、やむなく、あなた自身にも老化がやってきます。
昔の高齢者の老後というのは、「裕福」な印象があったのですが、それについては、もはや過去の話となります。
高齢者が裕福とされていたというのは、「団塊の世代」の前までだと思われます。
現時点で、50歳代だとしたら、5割程度が「国民年金未納」とされていて、将来、「無年金」あるいは「低年金」の状態で退職することになってしまいます。
そう遠くない時期、「職なし貯蓄なし年金なし」というような三重苦の高齢者が大量発生することになってしまうかもしれません。
情報通信関係に勤め、定年退職したAさん。
40代後半からもたらされたという給与の減額については、60歳の定年時にまで続いて、年収は最盛期の50%まで減りました。
5年間の定年延長も選択できたのですが、業務内容についてはほとんど一緒で、給料については、退職時の50%と会社側に言われたので、「自分自身で仕事を探し出そう」と、退職の道へ踏み切ったのです。
計算違いであったというのは、会社の業績が悪くなっていた時期に退職金制度の変更がされたため、予想していたよりも退職金が驚くほど少なかったことになります。
そうであっても、何らかの仕事に就けば、老後の生活については、乗りきれると思っていたが、職業安定所や就職雑誌、知人のツテなどの手段でも、職業が見つけられないのです。
Aさんはションボリした表情で語ります。
「年金のみでは、老後の生活ができない。もしかして、いつか、生活保護を受けることになってもおかしくない・・・」
近いうちに、このような「貧困高齢者」が急激に増加するかもしれないのです。
2016年末になると、生活保護受給世帯の半数以上というのが、高齢者世帯とのことです。
更に、これからより一層、生活保護を受給する高齢者が増えると予想されているのです。
貧困高齢者世帯が過半数超えで増加という実態。
「高齢者というのは裕福」というような印象はもうすでに間違いとなります。
「団塊の世代」を区切りとしまして、前後で実態は大幅に変わってしまいます。
何より、1950~60年代前半に生まれた世代については、1990年代のバブル経済崩壊からずっと、国内外の景気後退のタイミングで減給されるなり、リストラの対象になったりしたので、老後資金をきちんと蓄えることが出来なかった人が多いといえます。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」からしても、65歳以上の高齢者世帯の生活が、毎年厳しくなっている事が判断できます。
生活意識に対し「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計については、1995年に37.8%とされていたのに対し、1999年に46.1%、2004年には過半数の50.0%と上がり続けていて、10年後の2014年においては、58.8%に到達して、過去最高となったのです。
2015年、16年としては、少しは改善しているのですが、「ややゆとりがある」「大変ゆとりがある」と答えた人たちが増加していて、二極化になっている事がわかります。
併せて厚生労働省の「国民年金被保険者実態調査」では、1940年代後半生まれの団塊の世代だと、年金未納・免除者率が30%くらいであるのに対して、それ以降は、1950年代前半生まれ(65歳前後)で35%前後、1950年代後半生まれ(60歳前後)で45%前後、1960年代前半生まれ(55歳前後)で40%台後半と上がります。
保険料を納めていないため、受給できる年金額というのはわずかとなります。
年金受給額が最低生活費に達しないならば、「生活苦」がもたらされるのは当たり前の事でしょう。
このような無年金あるいは低年金というのは、現役時代の低収入が原因となります。
その象徴が非正規雇用者の増加となります。
現在では、賃金労働者の4割がパートや派遣というような「非正社員」になります。
1990年には2割となっていたことを考慮すると、25年間で2倍増しているのです。
この「非正規雇用率」というのを、「若者が非正規雇用を強いられている」と扱われるかもしれないのですが、間違いなく、団塊世代の定年が理由になります。
定年延長で、正社員から非正規雇用に変更された人が多いためです。
最近は、バブル経済崩壊のアジア通貨危機や、ITバブルの崩壊、リーマンショック等の経済危機に巻き込まれ、減給やリストラを乗り越えた1950年代生まれが年金生活の高齢者に仲間入りを始めたことによって、収入が最低生活費(現在の東京都では200万円程度)以下だったり、達していてもどうにかこうにかなので、貯蓄がない世帯というような、「貧困高齢者」「貧困高齢者予備軍」の増加があらわになっているのです。
2030年になると貧困高齢者世帯が500万世帯に増加という事態に。
「国民生活基礎調査」から、無年金世帯とメインの収入を年金を支えとする低所得(年収200万円以下)世帯数を概算したところ、「貧困高齢者世帯」については1997年には211万世帯だったのですが、2012年には2倍を超えるの445万世帯に増加しました。
いまでは、高齢者世帯(1327万世帯、2016年現在)の4世帯に1世帯が「貧困高齢者世帯」ということなのです。
それから、1950年代、60年代生まれが主体的に年金生活に入ると、2030年においては「貧困高齢者世帯」については500万世帯を上回ると予想されているのです。
厚生労働省が発表した2016年の「賃金構造基本調査」によると、一般労働者の所定内給与については前年比0.0%と横ばいとなっていました。
問題になってくるのは、性別・年齢階層別では、45~54歳男性と60代前半男性、60代女性の給与が下がっていることになります。
労働者数を考慮し合算してみれば、40代後半~50代前半の男性が一番大きい給与の押し下げ原因であるというのは、はっきりしています。
更には、企業規模別にみますと、大企業の男性給与だけが全体を押し下げている様子となります。
60代前半男性と60代女性の給与が、下がった原因は定年延長なのです。
さて、40代後半~50代前半の男性の給与はどんな理由で下がっているのでしょうか。
この年齢階層については、バブル期前後の「売り手市場」で大量採用された世代であって、昇進率が低くなった事などで平均給与が下落している確率の高いのです。
更に、大企業のケースでは、かつては昇進が止まったとしても「給与据え置き」だったのですが、今現在は「給与引き下げ」がされることがほとんどです。
これが最初の部分のAさんの場合です。
一応は60歳の定年まで勤め続ける事が出来て、定年を迎えた上で自らが希望することにより継続雇用を受けることが出来ます。
ですが、企業はその影響で、40代後半~50代前半をもって給与の引き下げをして、そして定年延長後の給与もどーんと引き下げる事が多いのです。
40代後半~50代前半については、子どもの進学や親の介護がスタートする時期でもあって、出費がかさみます。
同時期に、老後の生活費を考慮しざるを得ない年齢だったりします。
蓄えに力を入れたいが、賃金が上昇しないわけですからそれも難しいことになるのです。
給与は上昇せず貯蓄もできず、退職金もない世代。
今現在の40代後半~50代前半については、言ってみれば、バブル世代になります。
次なる、40代前半~40代半ばについては、就職氷河期とされていた団塊ジニア世代(1970年代前半生まれ)になります。
現在、正規雇用社員だったとしても、年棒制でボーナスがなくて、退職金制度もない欧米型の雇用契約を行なう企業が増加しています。
そのような企業の社員については、定年を至っても退職金がありませんので、退職と共に貯蓄を食いつぶす生活に入ってしまいます。
望ましい貯蓄があるのであれば「豊かな老後」を迎えることが出来ますが、貯蓄がないと「哀れな老後」を迎えるしかないのです。
団塊ジュニア世代が年金生活者の仲間入りをスタートした時、貧困高齢者の大量の増加が生じる可能性はとても高いことになります。
生産年齢人口の減少が進行する中において、現役世代が高齢者をアシストするというような現在の年金制度は成立しなくなるでしょう。
政府は、高齢者の所得集めに対しての対策を、即座に進めることが求められます。
後手にまわることで、「職なし貯蓄なし年金なし」だという三重苦の高齢者が大量発生することになってしまうのです。
日本人は徐々に貧困になっています。(9割は貧困高齢者という実態になる。と予想されている)
果たしてこの国はどうなってしまうのでしょうか。
日本は将来「貧困な国」に転落していってしまう可能性も否めません。
その現状を念頭に置いて、これからのことを考えておく必要がありそうです。