65歳以上、働いて収入を得れば、「年金がカット」されることから、損だと言われる意見が存在しているそうですが、それに関しては、どうなのでしょうか?
非常に気がかりなところだとおもいます!
昭和36年4月2日以降の生まれの男性、女性は昭和41年4月2日以降の生まれ方が、年金(老齢厚生年金+老齢基礎年金)を、貰えるというのは65歳からとなります。
人生100年時代と言われていることから、65歳以降においても働くことが当然のように変わっていくかもしれません。
典型的な誤解が、「65歳以降働けば年金がカットされることから損になる。」というものになります。
本日は、この誤解において、「年金カット」の仕組みをご紹介していこうと思います。
年金は一体いくら貰えるの?
普通の年金受給者だったら年金がカットされる心配というのはあまりありません。
サラリーマンの公的年金に関しては、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2階建てだとされます。
「老齢基礎年金」に関しては、原則、20歳から60歳まで40年加入して、年金額は、満額で779,300円(平成30年度)となります。
「老齢厚生年金」とは「収入」や「加入期間」に応じて異なっています。
厚生労働省が発表した平成30年度の年金額から考えても、モデル世帯では、国民年金から給付される1人分の老齢基礎年金に関しては月額64,941円、厚生年金から給付される夫婦2人分の老齢基礎年金が含まれた一般的な年金額は221,277円になります。
モデル世帯の年金額に関しては、厚生年金に夫が平均的収入、賞与含む月額換算の42.8万円で、40年間就業して、妻がその期間にまるっきり専業主婦だった世帯が年金を受け取り始めるというようなケースでの給付水準となります。
それでは、実質的な受給額はいくらになるのでしょうか。
平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成29年12月、厚生労働省年金局)においては、平成28年度末現在、厚生年金は月額145,638円、国民年金に関しては月額55,373円になります。
予想していたより少ないと考えられた方も少なくないのではないかと思います。
平均的な高齢者からすれば年金のみで生活していくというのは厳しいと言えそうです。
現実に、総務省「家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)家計調査の概要」を確認してみると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯)においては、1か月当たり、実収入209,198円、支出263,717円、収支54,519円の赤字となっているのです。
90歳まで生きるとするならば、単純計算すると25年間で約1,639万円不足してしまいます。
65歳までに少なくてもこれ程までの貯蓄ができないと、65歳以降も働くことが求められます。
年金カットの仕組み、「在職老齢年金」というのは
在職老齢年金というのは、60歳以降も働き、給料あるいは賞与等が支払われる人に対し、給与と厚生年金、トータルで一定額を超す場合となると、老齢厚生年金の一部あるいは全部が支給停止されてしまうしくみとなります。
支給停止されてしまうというのは「老齢厚生年金」となっており、「老齢基礎年金」ではありません。
平成30年度、60歳~65歳未満に関しては基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円超、65歳以上の場合なら基本月額と総報酬月額相当額の合計が46万円超ともなれば支給される年金が減額され始めます。
基本月額に関しては「加齢年金額」を除外した「老齢厚生年金」の月額を言い、総報酬月額相当額というのは、標準報酬月額にその月以前1年間の標準賞与額の1/12の額をプラスした額をいうのです。
全額支給停止になる場合なら、加給年金(扶養手当のようなもの)も停止になりますためご注意下さい。
在職老齢年金の具体的な例
例を挙げれば、60代前半、基本月額が10万円、標準報酬額が15万円、過去1年間の賞与が30万円ともなると、基本月額と総報酬相当額の合計は275,000円になって、28万円以下ですことから、老齢厚生年金に関してはカットされないで、全額支給されることになります。
28万円超の場合では4つのパターンで計算されます。
- 総報酬月額相当46万円以下で基本月額28万円以下の場合、支給停止額=(総報酬月月額相当額+基本月額-28万円)×1/2
- 総報酬月額相当46万円以下で、基本月額28万円超の場合、支給停止額=総報酬月額相当額×1/2
- 総報酬月額相当46万円超で基本月額28万円以下の場合、支給停止額=(46万円+基本月額-28万円)×1/2+(総報酬月額相当額-46万円)
- 総報酬月額相当46万円超で基本月額28万円超の場合、支給停止額=46万円×1/2+(総報酬月額相当額-46万円)
具体的に言うと、65歳以降、基本月額20万円、標準報酬月額が22万円、過去1年間の賞与が36万円になると、基本月額と総報酬相当月額の合計については45万円になって、46万円以下ですことから、「老齢厚生年金」に関しては全額支給されることになります。
46万円超の場合になると、超過額の1/2が支給停止だということです。
65歳以降は高年金、高年収の方でなければ、「老齢厚生年金」に関しては停止にならないのです。
「在職老齢年金」を意識せず働いた方が良いでしょう。